赫炎のインガノック感想

 赫炎のインガノックをクリアしたんだよ感想文。
 ネタバレはありますが具体的な過程まで書いているわけではありません。
誰と誰との間に何かがあるんだなーという程度はわかってしまうので、
そのへん気になる方は自衛をお願いします。一カ所だけ危険なところが
あるのでそこは反転かけています。不自然な空白に近づくな危険。

 以下あらすじを公式サイトより転載。

 

 異形都市インガノック。
 積層型巨大構造体から成る完全環境都市(アーコロジー)で
あったそこは、10年前に発生した《復活》ですべてが歪んでしまった。
人も、木々も、機関(エンジン)の排煙による灰色に満ちた大空さえも。
ひとつだけであったはずの太陽は、ふたつになって。恐るべき
幻想生物たちが姿を顕し、都市を豊かたらしめる蒸気機械文明さえ
もが、歪み、時に異形と化して人々を襲った。
 かろうじて変異を免れたのは、貴族の住まう都市上層のみ。
インガノックのごく僅か。100万を超すと言われる人口が密集する
都市下層は、今日も、地上に存在しえないはずの異形と奇病、
異常なまでに発達した暴力的な機関技術が満ちあふれて。
 歪んだ空から発生した無限の霧は、都市を完全に孤立させた。
 孤立都市にして、異形都市。インガノック。

 巡回医師ギーは、今日も都市を歩く。
 弱者絶滅を謳う上層貴族の定めた”死の都市法”を無視し、
歩き続け、下層の人々を診療し続ける。昨日も、今日も、明日も。
両手からこぼれ落ちていく無数の命を見つめて。10年前に失った
ものが、一体何であるのかを確かめるように、歩き続けた。

 ──そして、出会う。
 ──ふたりに。

 ひとりは、少女。インガノックの混沌をまるで知らない、黒の少女。
 その名はキーア。人が忘れた”笑顔”を絶やさぬ娘。
 もうひとりは、影。すべての幻想を失った都市において唯一
語られる、”おとぎ話”の登場人物。すなわち、万色に変化する
鋼の人影。
 その名は《奇械》。人ならざる鋼の影。異形を砕く刃の手。
 人に”美しいもの”をもたらす、インガノックただひとつの希望──

 あらすじを転載し公式サイトへのリンクをはりましたが、公式サイトの
紹介は見づらいうえに情報がみっしり詰まっているのでプレイ前にくじけそう
ではある。つうかあらすじ長い(笑)
 ここはあらすじだけを読んであとは体験版をやっていただきたい。
製品版はSEが強化されより世界を感じられます。あの雰囲気が全てです。

 同ライターの「蒼天のセレナリア」と世界を共有しているものの、セレナリア
をやっていなくとも充分楽しめます。やっていると20%楽しさ増量。
セレナリア ザ・ガイドを読んでいるともう10%楽しさ上増しです。
 イルがどうもあの人の血縁者らしいとかランドルフとか奇械の名前とか
ニヤニヤものでした。クトゥルフ神話をかじっていてもニヤニヤ。
 既知・未知世界の背景をふくめてインガノックで起こった事件を考察できる
という楽しさも味わえます。これが面白いのなんのってもう。

 物語は1本道。伏線も回収されているし話もきちんとケリがついています。
歪んだ世界にあって諦めずひたすらに手を差し伸べるギーの生き様は
どこからきてどこへ行くのか。セレナリアもインガノックも「手を差し伸べる」話
だが、インガノックはあまりにも儚く美しい。

 儚いって漢字は「人の夢」って書くんだよ……

 ぐんにょり。ぐんにょりだよライアー。インガノックは暗い話だろうなとは思って
いたけれど、泣きたい。ライターは鬼か。
 余韻を引きずりすぎてどうにかなりそうだ。もうなんでもいいからキャラ達を
幸せにしてやってください。いや、ある意味幸せになってはいるんだけど、
もうね、せつなくてたまらんのよ。いてもたってもいられなくなる。
せつなすぎて苦しくなってしまう。初期のニトロプラスかこれは。

 数は多くはないもののビジュアルは綺麗で音楽は世界構築に強く貢献して
います。
 音楽は本当にいい。ゲームの曲はゲームをやらずに曲だけ聴いてもピンとこない
ものだけど、インガノックの曲は単体で聴いてもいける。そしてゲームと合わさると
強まりまくります。街を歩くときにかかる曲たちは、背景CGと合わさっただけで街を
説明できてしまっている。
 インガノックの世界はサイバーパンクなものの未来的な印象はありません。
ビジュアルデザインがどこかアンティークなせいなんだろうか。
 数秘機関はサイバネティクスなんだけど、信号ではなく歯車で動いているような
印象を受けるんだよね。ルアハとかとくにそう。そのへん新鮮な切り口でした。
 物語は章仕立てで進んでいき1章の長さも短く遊びやすいのは良かったな。
今日はこの章が終わるまでという区切りをつけやすいです。

 とても面白かったので是非とも人に勧めたいところなのですが、そのへん
いつものライアーというか人を選びすぎるソフトになっております(笑)
 まずこれ、いわゆる一般的なエロゲではないです。どんなエロゲにも
濃かれ薄かれ視覚直撃系モザイク印の汁々エロ絵とエロワード乱舞の
性交シーンがあるもんですが、そんなのありゃせん
 女子キャラが脱いでる性交シーンはありますが、ええ、少女は対象外ですし
女子キャラ全員が主人公の嫁ではありません。
 そんなエロ薄ならエロゲで出すことないんじゃないかと思われるでしょうが、
このソフトをエロゲ以外のどこで出せるというのか(笑)
 「一般的な男性向けエロゲ」のエロに関する全ての期待をぶっちぎっている
ソフトですので、そこを理解してお買いあげいただきたい。 

 裸体が出てくる「心の交流」という点においては濃密なんだがな。

 もちろん欠点もある。
 戦闘はあるけどそこが物語に関係してくるようには作られていません。
バトル燃えゲーではないので欠点と言うよりも「もうちょっと欲張っても
いいんじゃないか」という感想になったのがバトル回りです。
 戦闘はいつも同じパターンなんですよ。同じ口上が流れ同じ展開であっと
いう間に終わってしまう。アニメや特撮にある必殺技や魔女っ子物の
変身シーンと同じ扱いなんだと気がついたのですが、インガノックは戦闘その
ものが必殺技扱い
なのでなんだか違和感があります。
 バトルBGMはどえらい燃え曲なので色気だしてもいいのでは、と思って
しまいます。

 話を理解するためには「心の声」をちゃんと読んでいかないとだめで、
かつ断片的に与えられる情報を組み合わせていかないとわからないのも
気になるところ。
 組み合わせていくのは面白かったのですが、ゲームだと情報の整理が
つく前に話が進んでしまって結局どういうことだったのか理解しにくいのですよ。
目の前の出来事に目がいってしまうので、情報の整理にまで脳が働かない
のです(笑) 今でもあちこち見てまわって補完しています。
 あまりにも説明的に書きすぎると雰囲気がなくなってしまいそうなので
さじ加減の難しいところでしょうが、もっと噛み砕いてもいいかなと思うところ
でもあります。最後までやらないと「心の声」が説明羅列に見えるってのもある。
 物語で何が起こってどうなったのかについてわからなかった人はここ
読んでみると大吉。あとこちらのサイトでも管理人の考えを含めた考察が
始まっています。用語解説も丁寧だし正直公式サイトよりも読みやすい(笑)

 欠点というか、こうだったらなと思えるところを上げていけばきりがない。
 やっぱり男性キャラを含めたフルボイスがよかったし、エフェクト回りももっと
工夫できそうだ。曲数ももう少しおおかったらとか「心の声」システムでルート
分岐ができたら違う話も読めたかなとか色々とある。あるんだけど、ライアー
だしなぁとも思ってしまう(笑)
 そこで思考停止してしまったら思考どころか進歩まで停止してしまうわけ
なので、ちょっとずつでも前に進んでいただけたらなぁと思います。

 主人公のギーはえっれぇ二枚目でその上根性あるっちゅう超絶いい男では
あるのですが、この人一種のだめんずです。
 いやいや生き様とかかっこいいとは思うんだけど、この男呼吸をして診療する
以外の生活ができてねぇええええええ!!!
 感情のインプットアウトプットとか、そのへんも回りがいじってやらないと
できないっぽい。排泄もままならない子犬か子猫ですかこいつは。
アティとかキーアがいないと生きていけない(笑)
 身体変化にともなう精神の変容、トラウマもあってか感情の起伏も乏しく
キャラ紹介時点から

 >女が脱ぎはじめないとエロ突入とならないダメさ加減を感じる。

 とか書いてましたがこの印象の斜め上をいっていた。

 ギー先生エチーすると死んじゃうかもなんだぜ?(笑)
 最初はアティの神経修復をしているのかと思っていたんだけど、セカンド
エチーで己の修復をしながら事に及んでいたと気がついた。
 アティセカンドはいいね。アティがめっちゃかわいいです。あんな熱烈な
告白しよって聞いてるこっちがきゅんきゅんくるわ! 先生もがんばりました。
ギーが好きと告げるのはアティだけってのがもうね。その後の展開もあって
色んな意味で転げ回りました。

 黒猫は死んだ! なぜだ!?
 ギーに(が)惚れていたからさ……

 泣いたよおりゃー。
 メインヒロインから嫁認定されるヒロイン。表情の変化もめまぐるしい
かわいい人。

 ケルカンはギーと表裏をなすキャラ。
 ギーは生かすために手を差し伸べるが、ケルカンは殺すために、黄泉路へ
誘うために手を伸ばす。迷いのない言動で力強い。
 原画の大石さんはケルカンが気に入っているのか描きやすいのか。
絵のばらつきもなくいい表情がそろっていたと思います。
 こいつとルアハのシーンは、なにか見てはいけないものを見てしまったような
背徳感といかがわしさであった。ものすげーくフェティッシュだ
 久々にどきどきするえろーすでしたよ。タナトスの身体に灯るエロスっちゅう
のは妖しくていいね。
 どうして殺しまくるのか最後に明らかになるのですが、ラストセリフがボイス
つきでぶっ飛びましたよ。このセリフにこの声(演技)をつけるのかライアー。
 ギーは何かに耐え続けて限界に達し少女にすがりつき号泣。
ケルカンは女に死なせてくれと望む。
 
 なにこの男ふたりの弱さガン晒し。

 男性向け? んなもん碓氷峠にこっちから捨ててきてやったわ! という
漢っぷりを発揮してるなこれ。
 気を張って生きてきた男ふたりが弱りきり女に泣き言をいうという、完全
無防備で子供みたいなところを見せられてローリング床萌え転がり。これは
たまらん。
 ギーはともかくケルカンまでこんな一面を披露たぁ、そりゃールアハも
ほっとけねぇってもんだ。
 ルアハはこの血筋に弱い。兄と妹どちらにもひっかかるんだから間違いない(笑)

 キーアはね、エチなしで正解だと思うんですよ。あそこでギーが手を出して
いたら超絶台無しになっていたと思う。
 そこで手を出すのがエロゲなんですが、ここいらもインガノックは成人向け
ゲームであってエロゲじゃないって思える一因だろうなぁ。
 ギーに対しては限りなくloveに近いlikeなのかな。自分がギーを肉体的に
包容することができないということを、背中に手を回せないってことで書いて
いるんだよね。ギーが求めてこないことを含めてアティにはなれないって。
そしてそれでもいいよって言うわけですよ。なんという包容力少女。
ギーが全てをさらして泣き言いえたのはキーアに対してだったもんさ。
心の交流という点では群を抜いて沁みいるシーンでした。
 アティといいキーアといいどちらもいい女。どちらもせつねぇよおーーん!!

 インガノックはいいゲームだ。本当にいい。
 未プレイの方で上記の部分を乗り越えられるようならば是非とも遊んで
いただきたい。

 

赫炎のインガノック ~What a beautiful people~ 赫炎のインガノック ~What a beautiful people~

by G-Tools

 ※インガノック製品版を終了してスタッフロールをみたところ、男性声優は
名義を変えていらっしゃるようなので過去ログ該当部分を伏せました。
キャスティング事務所と該当部分日本語訳で推測してください。

    • むろ
    • 2007-12/02 9:03pm

    はじめましてー

    いやー11話は・・・・桜井さんの鬼!(笑)

    キーアは包容力ありすぎですね・・・
    初め「何か裏があるんじゃなかろうか」なんて疑ってしまった自分は何て矮小なんでしょう!
    エチ無しで安心は同じくです。一瞬まさか・・・と思いましたが、良かったー

    ケルカン大好きですケルカン

    では、失礼しましたー

    • せつが
    • 2007-12/02 11:42pm

    ●むろさん
    はじめまして。
    鬼ですよね、鬼!
    あんなシーンを見せられた直後にあの展開ってのは、セオリーにそっては
    いるものの堪えました。
    ギーに好きだよって言われた直後のアティの表情がたまりません。

    キーアとの交流はよくえちなしで通したなぁと。
    商売を考えたらあの展開でのGOサインはなかなか出せないんじゃ
    ないかと。
    そのおかげでとてもいいシーンになったと思います。

    ケルカンのラストセリフは中の人ありがとうと言いたい。
    いやー色っぽいこえでした。

  1. 2014-06/04

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